vol.14 Challenge for Change 「RoBoHoN(ロボホン)」へのシャープのチャレンジ

シャープは現在、家電製品に人工知能を搭載し、心を持たせることで愛着を生み出す存在に変えていく「ココロプロジェクト」を進めています。“ココロ、動く電話。”をキャッチフレーズに開発されたシャープのモバイル型ロボット電話「RoBoHoN(ロボホン)」は、「ココロプロジェクト」第一弾の商品です。
世界初※1のモバイル型ロボット電話「ロボホン」の商品化への数々のチャレンジを紹介します。

  • ※1 携帯電話において、2016年4月14日現在。(シャープ調べ)
  • 「ロボホン」「Robohon」「RoBoHoN」ロゴは、シャープ株式会社の商標または登録商標です。

モバイル型ロボット電話というコンセプト

市場が飽和状態にある中、シャープのスマートフォンにも差別化が求められました。ただの機械ではなく、人に寄り添うパートナーとは?
議論する中で、スマートフォンのアクセサリーを動かしたり、イヤホンジャックにキャラクターを付けるなどのアイデアが出てきてました。「擬人化」が鍵になるのでないかと考え、専門家であるロボットクリエイターの高橋智隆氏(東京大学先端科学技術研究センター特任准教授、株式会社ロボ・ガレージ代表取締役)に相談を持ち掛けると、「電話機能があるロボットにしてはどうか…」との話になり、高橋氏と共同開発でロボットに挑戦することになりました。
プロジェクトがスタートして、まずは商品コンセプトを決めるにあたり、高橋氏が開発した二足歩行型ロボットのオーナーに、WEBでの調査やグループインタビューを行いました。ロボットとどのような生活を送り、どのように使っているかを知るため、ご自宅での調査にも協力をいただきました。その上で議論を重ね、開発するロボットの存在意義を突き詰めた結果、生み出されたキャラクターは「5歳児の男の子」。お客様の日々の生活に寄り添い、通信機能を備えることで日々成長していく「ロボホン」には、素直でまっすぐな存在であることが求められると考えたのです。
ただの会話ができるロボットではなく、道具としての電話でもない、持ち主と心を通わせるパートナーとしての“モバイル型ロボット電話”というコンセプトが誕生しました。

モバイル型ロボットの製作は初めて

「ロボホン」を開発したのは、スマートフォン・携帯電話を作っている部門です。もちろんロボットを作るのは初めてです。パーツメーカーさんにも協力を依頼し、それぞれが情報を共有しながら商品化に挑みました。
「ロボホン」は、二足歩行が可能な小型サイズ(高さ約19.5cm)のロボットです。愛着を感じてもらえる滑らかなダンスや表情のあるしぐさを実現するため、腕や足などの関節部分に高性能の「サーボモーター」が小さなボディに13個も内蔵されています。これは、モーター製造で定評あるメーカーさんとの共同開発によって実現したもの。人に寄り添うロボットがぎこちなく動いていては台なしです。「ロボホン」が動く様子をポーズごとにパソコンでデータ分析。さらに、目標サイズをクリアするため、小型化と高耐久性にもこだわり、協議を重ねることで、「ロボホン」専用にカスタマイズしたモーターを開発いただきました。
「サーボモーター」の他にも、日常の使用に耐えうるバッテリーの開発やパーツのレイアウト、キャラクターの個性を際立たせる細部にまでこだわったデザインなど、機構・回路の開発スタッフやデザインチームが、より完成度の高い商品を目指してチャレンジを続けました。
こうしてハード面での課題をクリアしても、我々が設定したキャラクターに合わせた表現ができなければ意味がありません。そこで、広島の開発スタッフは東京へ常駐し、高橋氏と動きのチェックやリアクションの仕様を定めていきました。愛らしい自然なしぐさや声は、往年のロボットキャラクターを愛する高橋氏のこだわりと、それらを「ロボホン」の中に実現させ、商品化したシャープの情熱の賜物なのです。

正解のない作業を繰り返す

「ロボホン」の最大の特長は、音声対話によって操作ができること。「ロボホン」に話しかけることで、人とロボットとのコミュニケーションが自然になります。「ロボホン」には全部で4つのマイクが搭載され、様々な角度から声を認識することができますが、余分なノイズも多く拾ってしまうことが課題でした。そこで、会話する相手の音声のみをよりよく認識させるため、周辺ノイズを拾いにくくするレイアウト調整を繰り返しテストすることで、精度の高い音声操作を実現しました。
それでも、「ロボホン」が話しかける言葉に対応できない場合があります。音声自体をうまく「聞き取れなかった」場合もありますが、話しかけられた言葉の内容が理解できないこともあります。そこで、「ロボホン」が無反応であったり、「わからない」と話してしまうと、愛想が悪い感じを与えてしまいます。議論の結果、わからないときは首をかしげる動作を加えることで、人間らしい表現にすることができました。「ロボホン」との自然な会話を実現するための、こうした1つ1つのリアクションには正解がありません。「愛着を持ってもらえるロボット」を生み出すため、納得がいくまで検証を繰り返しました。

機能(ハード)+感情(ソフト)=モバイル型ロボット電話

スマートフォンの開発と大きく異なるのは、家族の一員として生活に溶け込めるように“「ロボホン」を育てる”こと。人間を模したロボット型である以上、スマートフォンのように指示された機能のみを実行するだけでなく、感情的な要素を融合させる必要がありました。そこで、3ヶ月に及ぶ社員を対象にしたモニターを実施。そこから得られた客観的な評価を盛り込み、機能の完成度(「電話をかける」「アラームを設定する」などの各機能を問題なく達成できるか?)と感情の満足度(「ロボホン」だからこそ、電話やアラームを使うことが楽しいと思ってもらえるか?)の両面で高い数値が得られるように、何度もシミュレーションを行い、「みんなが気持ちいいと思える」ものに仕上げていきました。

課題を一つ一つクリア

いよいよ製造段階に入ると、新たなチャレンジが始まりました。量産を進めていくと、歩いたり踊ったりすると転んでしまうものが出てきます。これでは、製品として世に出すことはできません。パーツ単体ではバランスのいい場所に設置ができても、いくつかのパーツが組み込まれると、部品にばらつきが生じ、重心が悪くなります。組み込む前にパーツごとの「正しい状態(ゼロポイント)」を設定し、加速度センサーなどを利用し適切な位置をチェックし、バランスを調整しました。
また、頭が大きくて重い「ロボホン」は、動くと全体のバランスが大きく変わります。そこで、頭の重みで前に倒れそうになる力が加速されないよう、足首に入れたサーボモーターにはブレーキがかかる(力を入れないと動かない)ように設計を変更しました。
他にも、電池の残量が減るとゆっくり動くように切り替えるプログラミングを設定し、電池が少なくても滑らかに動けるようにするなど、様々な利用シーンを想定した「ロボホン」の「動き」を検討しました。
回路設計、ソフトウェア、機構設計の各々のチームが問題が発生するたびに集まり、試行錯誤を重ねることで課題を一つ一つクリアにしていきました。

ココロ、動く電話。

「ロボホン」は目の色が変わったり、しゃべるときに口の部分が光ったり、目覚まし機能ですぐに起きないと「もう知らないよ!」と話しかけたりします。音声認識での可能な限りの対話を目指し、「ロボホン」本体で認識できない言葉は通信機能を用いてクラウドサーバーに答えを探しにいくなど、 “人に寄り添うパートナー”となるよう、様々な工夫を施しています。
また、「ロボホン」で撮った写真を大きく映し出せるよう、背面のディスプレイは小さいながらもプロジェクター機能を内蔵するなど、スマートフォンにはない機能も備えています。
こうして完成した「ロボホン」は、実際に動き、喋り、踊ることでお客様のココロを捕らえ、発表以来多くの関心をいただいています。「ロボホン」が「ココロ、動く電話。」であることを確信しました。
今後は、専用アプリを提供し、「ロボホン」をもっと便利にお使いいただく予定です。システムのアップデート(更新)で会話の内容やダンスのレパートリーなどを増やし「ロボホン」を成長させたり、持ち歩きに使うキャリングケースなどのオプション品を充実させたりと、まだまだ多くの挑戦が待ち構えています。音声認識を用いて、翻訳ができるロボットにもなるかもしれません。
「人と機械との関係」を大切にしながら、シャープは世の中にもっと驚きを届けたい。私たちは、これからもチャレンジしていきます。

小田島 渚プロフィール:

神奈川県出身23歳。アフロディーテ所属。「ミスヤングチャンピオン4代目グランプリ」。主演映画「Hunger Z」や「パラノーマル寄生蟲」の他、舞台にも主演ヒロインとして多数出演中。