シャープがエレクトロニクス関連の事業を進めるようになったきっかけは、関東大震災でした。1912 年に19歳で独立した創業者早川徳次は、金属加工の技術をもとに1915 年に早川式繰り出し鉛筆(今日のシャープペンシル) を発明しました。海外から大きな注文が入り、事業は順調に進んでいましたが、1923 年9 月1日に東京を襲った関東大震災によって、シャープペンシルの工場は焼失、早川は最愛の妻と二人の息子を失いました。 再起を期した早川は大阪に移り、金属加工の技術を生かして鉱石ラジオの開発に取り組み、日本で初めて製品化に成功。その後も国産初のテレビや世界初のオールトランジスタ電卓などを開発し、シャープは総合エレクトロニクスメーカーへと発展しました。 逆境の中で新たな目標に挑み、再起を果たした創業者の精神は、環境変化を革新の機会と捉えて自らを変革し、次の時代を切り拓く企業風土となって受け継がれています。
シャープは今年創業100 周年を迎え「エコ・ポジティブ カンパニー」を企業ビジョンに掲げています。「エコ・ポジティブ カンパニー」とは、すべてのステークホルダーの皆さまとともに、事業活動による環境負荷を大幅に上回る環境貢献を果たす企業を意味します。 そして、企業ビジョンのもとに二つの事業ビジョンを設定しています。ひとつは「省エネ・創エネ機器を核とした環境・健康事業で世界に貢献する」、もうひとつは「オンリーワン液晶ディスプレイでユビキタス社会に貢献する」というものです。 東日本大震災と原子力発電所の事故は、太陽光発電など、再生可能エネルギーへの期待を高め、暮らしやビジネスに省エネと節電を求めています。前述のビジョンの実現に向けた取り組みを一層強化することが、被災地の復興、さらには日本の発展と世界への貢献につながるものと確信しています。
低炭素で安心・安全なエネルギーに対する世界的な需要の高まりを背景に、シャープは世界各地で太陽光発電に関わるトータル・ソリューション事業を積極的に展開しています。 タイ王国では、同国の独立発電事業会社NED 社から、同国最大手の建設会社ITD 社/ITE 社と共同で建設を受注した世界最大級73MW のメガソーラー発電所が昨年末に稼動を開始しています。 また、欧州では2010 年7月に、イタリア最大の電力会社エネル社のグループ会社であるエネル・グリーン・パワー社と太陽光独立発電事業の合弁会社を設立しており、昨年3月には第一号となる太陽光発電所が南イタリアに完成し、発電事業を開始しています。今後2016 年末までに累計500MW 以上の規模となる複数の太陽光発電所を建設し、地中海地域を中心に、欧州や中東、アフリカで発電事業を展開する計画です。 これらの太陽光発電所に設置する太陽電池は、イタリアの薄膜太陽電池工場から供給する計画です。この工場は、シャープとエネル・グリーン・パワー社、そしてST マイクロエレクトロニクス社が2010 年7 月に設立した合弁会社の生産事業として計画され、昨年末から量産を開始しています。 さらに北米市場においては、2010 年に米国の太陽光発電プラントの開発事業者であるリカレント社を傘下に収めており、メガソーラー発電所の開発事業を推進しています。 太陽光発電の本格的な普及は、「グリッドパリティ(既存電力並みの発電コスト)」の実現が鍵となります。国内においては技術革新により、一般家庭用の電力において、数年のうちにグリッドパリティが実現するものと考えています。 シャープは、太陽電池セル・モジュールの開発・生産からシステム設計、メガソーラー発電所の建設・メンテナンス、さらには太陽光独立発電事業に至るまで、バリューチェーン全体に事業を拡大することによってソリューション能力を高めます。そして、世界各地でグリッドパリティの実現に貢献し、再生可能エネルギーの時代を切り拓いてまいります。
シャープは、太陽光発電による創エネへの取り組みとともに、液晶テレビやLED 照明、エアコンや冷蔵庫、デジタル複合機など、省エネ商品の開発・普及に注力しています。 特に新興国や発展途上国においては、エネルギーの供給が充分でなく、また、化石資源は有限であることから、今後の発展のためには、太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギーと省エネ商品が不可欠と言えます。シャープはそうしたニーズにお応えするべく、太陽光発電と省エネ商品のいずれにおいても、現地完結型の「地産地消」のモノづくりを進めています。 創エネ・省エネ商品をグローバルに展開した結果、シャープは、企業ビジョン実現のための最重要目標として設定した温室効果ガスの2012 年度目標、すなわち、創エネ・省エネ商品による温室効果ガス削減貢献量を、事業活動による温室効果ガス排出量の2倍以上にするという目標を、1年早く2011 年度の実績で達成する見込みです。 企業ビジョン「エコ・ポジティブ カンパニー」をめざした取り組みは全社に拡がっており、温室効果ガスや廃棄物等、環境負荷の抑制や低減につながっている他、環境社会貢献活動への参加が国内だけで年間延べ約3万人、東京商工会議所が実施されている環境社会検定試験(eco 検定) の合格者が8 千人を超える(2011 年3 月末時点、国内シャープグループ社員31,500 人) など、社員のエコ・ポジティブ マインドも高まっています。
国際社会と世界経済が従来の枠組みを超えて大きく変化し続ける中、シャープは一層グローバルに事業を展開してまいります。その展開にあたり、地球環境保全、人権尊重・平等、および初等教育機会の提供などの社会的課題の解決に貢献する企業活動への期待が大きくなっていることを感じています。 シャープは経営理念および経営信条「誠意と創意」に基づき、これからも独自技術およびオンリーワン商品・デバイスの開発による「新しい価値」づくりに邁進します。そして、多様な人材を活かす戦略や教育支援活動の実施など、経営リソースの活用を通じて、前述の社会的課題の解決を含む社会の持続可能な発展に貢献してまいります。 また、2009 年から参加している国連グローバル・コンパクトの「人権」「労働基準」「環境」「腐敗防止」に関する10 原則を今後も支持し、消費者、株主・投資家、取引先、調達先、従業員、地域社会などのステークホルダーの皆さまから一層の信頼を得られるよう、各分野における取り組みを継続的に拡充し、社会的責任を果たしてまいります。 今後も企業活動に関する情報開示に努め、皆さまからの貴重なご意見を経営に反映してまいります。忌憚のないご意見をお待ちしております。
2012 年4 月
|