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亀山モデルを支える匠の職人たち

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フォントの匠 金型の匠 調合の匠 信号処理の匠 技術の匠 映像の匠 開発の匠 環境の匠

紙から液晶へ。メディアによってフォントは変わります。

* 所属及び役職、呼称につきましては、公開当時のものです。

AQUOS RシリーズEPG(電子番組表)画面

デジタルの時代になり、液晶画面で文字を読む機会が飛躍的に増えた。
インターネットや携帯電話はもちろん、電子書籍も身近なものになっている。
テレビの世界も同様である。
デジタル放送が始まり、EPG(電子番組表)やデータ放送など
テレビに映る文字の読みやすさ、美しさは軽視できない。
シャープの亀山第2工場が稼動し、フラッグシップとなるRシリーズの開発でも
最後に課題として浮上したのが「文字」だった。
フルスペックハイビジョンの高画質。映像が美しくなるほど
それにふさわしい文字が求められる。

白羽の矢が立ったのは、小谷章夫。
現在、技術本部プラットフォーム開発センターコンテンツ技術開発室技師長補を勤める。
アクオスに採用されているLCフォント(液晶画面用フォント技術)の生みの親である。

5年かけて作ったフォントが採用されなかった。

LCフォントは、じつは長い歴史を持つ。
1991年。当時、シャープの主力事業だったワープロの印刷用に上司から開発を依頼された。
家電メーカーが独自のフォントを作ることなど例がない。
小谷も、はじめは活字や写植の会社に「書体を使わせてほしい」と打診した。
今では考えられないくらい、荒い文字しか印刷できなかった時代だ。
使いたい書体を持っている会社からは「ワープロで使ってほしくない」「文字のデザインを変更されるのは困る」といった理由で断られた。
自分たちで作るしかない。
日本は縦書き文化。活字も縦書きを前提にデザインされていた。
ワープロは横書きが主である。活字を横書きで印刷すると文字が上下にばらついた。
新しいフォントは横書きで使われる、しかも次の舞台は液晶画面だ。
文字のバランス、線の太さや角度など、液晶用の文字のルールを定めていった。
JIS第1・第2水準、約8000文字を作り上げたときは5年の歳月が流れていた。
にもかかわらず、ワープロにすぐ採用されることはなかった。
当時のワープロは明朝体。小谷が開発したのはゴシック体だった。
「新しく見直した偏(へん)と旁(つくり)のバランスもワープロになじまないといわれましてね。あの時は、もう開発をやめようかと思いました」。
その後、「見えるラジオ」やパソコン「メビウス」などにも採用されたが、
LCフォントがようやく脚光を浴びるのは、NTTドコモの「iモード」に代表されるように携帯電話の液晶に文字情報が溢れ出るまで待たなければならなかった。

「読む文字」から「見る文字」へ。

アクオス用LCフォント・携帯電話用LCフォント

LCフォントは、携帯電話の小さな液晶画面でも文字がつぶれず、
しかも美しく表示できる技術を備えていた。
そもそも液晶はドット(画素)の集まりで表示される。
たとえば16ドットの文字といえば、縦横16×16、256個のマス目を
塗りつぶしていってひとつの文字を作る。

LCフォントはすでに12ドットの文字も開発されていた。
12ドットになると、画数の多い漢字を正確に表示するのが物理的に不可能な場合もある。
小谷によると、文字のいちばん大きな特長はシルエットで、外形さえくずさなければ線を省略しても読めるという。
それを小谷は「文字のDNA」という。
昔から文字が持っている遺伝子を守っていれば、省略した文字も読むことができる。
瞬間的に判別できること。
これが液晶用の文字で最も重要なことだった。
しかし、液晶テレビではまったく考えを変えなければいけなかった。

テレビの開発現場でまずいわれたことは、「2.5メートル離れて見ろ」。
それは、「読む文字」と「見る文字」のちがいだった。
携帯電話などでは、きちんと読める「判読性」が求められるが、液晶テレビの場合は、「正確で美しい」文字が求められるからだ。

約2.5メートル離れて文字の“見え方”をチェックする小谷

文字のデザインからソフトウェア、さらにハードウェアの構成まで、一から作り直した。
線を省略するのではなく、太さを調整して表現することも必要になる。
文字のサイズが変われば、美しさのバランスも変わる。
大きさを変えても自動的に美しいバランスを保つ「スケーラブルフォント技術」も採用したが、
最後は、やはり人間の目でチェックしなければならない。
アクオスに使われているのはJIS第1・第2水準や放送用文字を合わせておよそ9000文字。
書体は3タイプ、10サイズ。
つまり、約27万文字を一文字ずつ小谷の開発チームはチェックしていった。
「使われる製品(メディア)に応じてフォント技術は変えないといけない。それがよくわかりました。
アクオスのRシリーズには、いままで培ってきたすべてのノウハウが入っています」。
いまやおなじみのEPG(電子番組表)も、LCフォントなら見やすくきれいに表示でき、
液晶テレビの”美しさ”に一役買っている。

文字のデジタル化で抜け落ちたこと

「ひとつひとつの書体には、それぞれ作られた背景があります。活字には活字のよさがある。デジタル化の過程でそのよさを切り捨てざるを得なかったこともあります」。
それを技術によって忠実に再現していくことが今後の課題だと語る。
小谷は一昨年、「文字の重心」に関する論文を発表した。
重心とは、たんにマス目の中心ではなく心理的に感じる文字の中心である。
重心をそろえることで美しい文字の配列ができあがる。この論文で彼は博士号を取得した。

フォントの匠でも、作るのが難しい文字はあるのだろうか。
「デザインでいえば画数が多い漢字はじつは簡単で、画数が少ない漢字のほうが難しいのです」。
とくに難しいのは、小谷の「小」だそうだ。

LCフォントデザインルールの一例
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