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亀山モデルを支える匠の職人たち

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液晶の気持ちになって考えるんです。:調合の匠 繁田光浩

* 所属及び役職、呼称につきましては、公開当時のものです。

液晶テレビの弱点を克服した「倍速ASV液晶パネル」。


業界で初めて※フルスペックハイビジョンパネルで倍速(120Hz)駆動表示を実現した地上・BS・110度CSデジタルハイビジョン液晶テレビ AQUOS Rシリーズ ※国内市販のデジタルハイビジョン液晶テレビとして。

液晶テレビが店頭に並びはじめて間もない頃、こんな声がよく聞かれた。
「液晶テレビは残像が見える」。
当時、液晶パネルの用途として主流だったパソコン用モニターでは、動画を見る機会はほとんどなかった。しかし、テレビは動画の世界である。
以来、「動画に弱い」という評価が液晶につきまとった。
その後、シャープは「ASV液晶」を開発。コントラストや輝度、視野角などひとつずつ表示性能を向上させ弱点を克服し、液晶テレビを大きく進化させたが、 ここへきて最大の課題であった動画性能を大幅に向上させる技術が現れた。
それが「倍速フルHD液晶技術」である。
テレビの映像は1秒間に送られてくる60コマの静止画を連続して映し出すことによって動画に見せている。
小学生の頃遊んだぺらぺらマンガと原理は同じである。
倍速技術とは、60コマの静止画をテレビ内部で120コマに増やすことで動きを滑らかに見せる技術だ。ひとことで言えばそうなる。
もちろん、さまざまな新技術が積み重なって実現したものではあるが、
思い切って単純化すると、前後のコマを解析して新しいコマを作るLSIと、
これまで以上に高速で反応する液晶が、倍速技術を支えている。
2007年2月。シャープはフルスペックハイビジョンで世界初の倍速技術を搭載したモデルを発表。
そして新型アクオスGシリーズ全機種に展開し、大型フルハイビジョン液晶テレビの市場を拡大する。
今回は、「倍速ASV液晶パネル」を支えるうちのひとつ、“超高速液晶”にスポットを当てた。

大画面・フルHD時代の液晶へ。

繁田光浩

AV・液晶映像技術開発本部 技術企画室長、繁田光浩。1984年の入社以来、ディスプレイや半導体レーザなど、シャープが得意とするデバイス技術のさまざまな分野で仕事をしてきた。
液晶に携わるのは1995年。
まだパソコン用モニターとしての液晶が主流だった。
そして、2000年。
“CRTを凌駕する表示性能”と銘打たれ、
現在の大画面液晶テレビの原型ともいえる画期的な液晶を開発した。
CEATECに出展されたその「ASV液晶」は、CRTと比較展示されていた。
対外的に公表されなかった技術を含め、現在の「倍速フルHD液晶技術」につながる要素が多く盛り込まれ、「次世代テレビは液晶で決まりだ」と関係者に予感させた、画期的な展示であった。
その新技術のひとつに、超高速液晶があった。

翌年の2001年に30V型、2002年には37V型を発売。そして2004年1月の亀山第1工場の稼働によって、30V型クラスの液晶テレビが本格的に普及しはじめ、液晶テレビが、パーソナルテレビからリビングで楽しむ大画面テレビへと、どんどん進化し移行していく時代に入っていた。
液晶材料を一度見直すと、液晶パネル内の構造も変わるため、作り方やパネルを構成する光学フィルムなどの材料にも大きな影響を及ぼす。製品化のめどをつけるまでに半年から1年の期間が必要だった。
そのため、30型クラスまでは、液晶材料まで大幅に見直すこともなく、開発・商品化が進められた。
しかし、亀山第2工場の稼働を控え、40型クラス以上の大画面パネルを生産するには、これまで蓄えてきた技術だけでは限界があった。
繁田は大画面・フルスペックハイビジョンにふさわしい液晶の開発に取り掛かった。

数十種類の液晶をブレンドする。



写真上:ビーカーに注いだ液晶分子 写真下:偏光顕微鏡で覗いた液晶の様子 ※液晶テレビで使われる液晶はおよそ1cc=1g

第2工場で生産する大画面フルスペックハイビジョンには、従来の倍の速さで動き、かつ電圧の変化に応じて正確に反応する液晶が求められた。
液晶テレビに使用されている液晶は、じつは1種類ではない。
液晶にも役割のちがいがあって、電圧の変化に応じて反応が速いもの、光の透過率がいいものなど数十種類をブレンドしている。
“ベストブレンド”を見つけ出すのが繁田の仕事である。
ここで問題が出る。ブレンドするがゆえに、液晶の動きが揃わないのだ。
繁田は液晶の動きを電車の中の人に例えて説明する。
「つり革を持って立っている人がたくさんいたとします。
電車が急ブレーキを掛けると、よろける人、倒れる人、いろいろです。
みんな同じ動きではありません。背の高い人もいれば低い人もいる。
それを一斉に、しかもきれいに揃って倒さないといけないのです」
液晶がきれいに、かつ一斉方向に倒れなければ、結果的に表示ムラが発生するなど、大きく画質に影響する。それが大画面になればさらに顕著に目立つ。
相手は目に見える人間ではなく、ナノレベルの液晶分子である。
それを思い通りの速さで、思い通りの方向へコントロールする。
試作を繰り返す日々が続いた。
13型のパネルで実験し、手ごたえのあったブレンドは37型パネルでさらに実験を重ねた。
そしてついに、倍速ASV液晶で使用できるブレンドが出来上がった。
これは、いま考えられる液晶の材料としては、最高のもので、まず、『アクオス史上最も美しい』Rシリーズに導入された。
どういう方法で実現したのか、それはやはり企業秘密だが、これぞシャープがいう「秘伝のたれ」だ。
他社が採用している方法とまったくちがうことは確かだ。
繁田は「液晶の技術者って皆そうなんですが、液晶の気持ちになって考えると答えが見つかったんです」と笑った。

液晶ディスプレイの原理と技術(「液晶の世界」)

いまがターニングポイント。

繁田光浩

「倍速ASV液晶パネル」が完成し、長年言われていた「液晶の課題」は解決した。 しかし繁田は「今が液晶にとってターニングポイント」という。
今後、ますます液晶パネルは用途や数量を拡大していくことが予想される。
事実、液晶テレビはもちろん、大型表示ディスプレイの販売数量においても急激な増加が予想されている。
「液晶パネルの生産量を増やすためにも、従来の複雑なブレンドが必要な液晶から、今までの液晶のブレンドの概念を覆す、より作りやすい液晶が求められるのでは」と繁田は予想する。
液晶自体が進化することはこれまでもあったし、これからもあるだろう。

理想の液晶とは?という質問に少し考えて繁田は答えた。
「まったくブレンドしなくてもいい液晶を発見できれば、それが理想ですね」
液晶の匠が究極の液晶を見つけたとき、私たちは見たこともない映像に出会うだろう。

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