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亀山モデルを支える匠の職人たち

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デザイナーの熱い想いを形にするのが、金型の仕事です。:金型の匠 田村孔一

* 所属及び役職、呼称につきましては、公開当時のものです。


「自宅でアクオスを眺めていると、つくづく洗練されたデザインだなあと思いますね」。
と語るのは、田村孔一。
シャープマニファクチャリングシステム株式会社(*1)取締役第1機器部長。
彼は、紙の上に描かれた液晶テレビアクオスのデザインイメージを具体的な製品としての形に仕上げていく「金型の匠」である。
1982年、当時のシャープ精機に入社。プラスチック金型部門に配属された。
以来、金型一筋。
自らを「金型部門の棟梁」と呼ぶ田村は、個人の技術を組織の力としてまとめ上げ、年間約800台の金型を世界中に送り出している。

プラスチック金型は、いってみれば、「たい焼き」の型と同じ仕組みだ。
テレビキャビネットをはじめ、液晶テレビに使用される大小さまざまのプラスチック部品は、空間を持たせた一対の金型の中に溶かした材料を流し込み、それを冷却して作られる。
金型部品同士の隙間は、0.03mm以内。隙間が大きすぎると材料がはみだす。
ひとつの金型の中には、隙間を0にする箇所と材料がはみださない隙間をあえてつくる箇所とを設ける必要がある。65V型アクオスの場合、金型の大きさは全長2m、重さ20トンを超える。その巨大な鉄の塊をすみずみまでこの精度で仕上げなければならない。

射出成形過程(樹脂充填過程)連続写真

(*1) シャープマニファクチャリングシステム株式会社:シャープグループで、工場用の機器、装置の開発・生産・販売を担う100%出資子会社。液晶テレビアクオスの金型も製造。

日本の美を突きつめた、液晶テレビアクオスのデザイン。

金型仕上がり具合の確認 52V型液晶TV用金型を成形機に取り付けた状態

金型は「縁の下の力持ち」。
デザイナーが描いた亀山モデルへの想いを、いかに忠実に形として具現化するかが仕事だ。
しかし、単に形だけではない。製品としての質感、手触り、そしてデザイン全体の品格までも対応することが求められる。

画質、音質、デザインのすべてを追及したプレミアムシリーズ<Rシリーズ>に採用された「ピアノブラックフィニッシュ」は、漆塗りを思わせる光沢を実現するため、金型においても金型材料の選択にはじまり、最終の人の手による磨き工程に至るまで、従来以上のハイレベルな金型技術で完成させた。
「日本の美は、追求していくと茶室に代表されるように非常にシンプルな形となります。アクオスが表現しているのは、まさに日本の美そのものです。シンプルで張り詰めた緊張感を再現するのに、たいへん苦労しました。」

金型部門の代表として田村が感じているのは、シャープのモノづくりに対する熱い想いだ。
「機構設計者は、デザイナーの意図を忠実に継承しながらも、環境に配慮した素材を選択し、製品としての安全性を考慮したシャープらしいモノづくりを追求しています。だから、いつも彼らの熱い想いが私たちに伝わってくるのです。私にとって金型とは、その想いを形ある製品に具現化する仕事だと思っています。」

そのシャープらしさの一端が、アクオスの裏側に現われていると、田村は言う。
「キャビネットの裏は、波目形状のデザインになっていたのをご存知でしょうか。山と谷のあの美しいラインを作り出すのには、非常に苦労しました。販売店の売り場では、テレビを正面からご覧頂く機会が多く、裏側まで見てくださるお客さまがどれだけいらっしゃるかわかりません。でも、そこまでこだわるのがシャープらしさです。前面のデザインだけでなく、トータルのデザインとしてこだわり続けなければ、アクオスのあの格調ある佇まいは出せなかったと思います。」

デザインの進化は、技術を進化させる。

46V型液晶テレビ用金型の後キャビネット 事例集に基づく事前検討

新しい技術を少しでも早く商品化させる。
そのために、金型も日々改善が求められる。金型の製作期間短縮だけでなく、金型を使い成形する時間の短縮を追及することも大切である。
「成形時間も、たとえば1台につき1秒短縮できれば、その金型1台で何十万台を成形するとトータルとして大幅な時間短縮になります。成形時間の短縮は、電力量の削減にもなり、環境負荷の低減に寄与します。」
同じ形のテレビでも、プラスチック原料(樹脂)の種類が変われば金型としての対応も変わる。
樹脂がムラなくスムーズに充填されるように、コンピューターで金型の温度分布や樹脂の流れ等を解析し、最新設備で金型を削りだしたあと最後は人間の手でチューニングする。
金型は先端のハイテク技術と職人技が融合する世界。
「組織として知恵を出し合うことが大切です。モノづくりを極めていく姿勢がなければ、デザイナーの想い、機構設計者の想いは形にできません。デザインの進化が技術も進化させるのです。」

田村の実家は町工場で、生まれたときから家に金型があったという。
子どもの頃から仕事を手伝っていた彼は、「別の仕事を経験したくてシャープに入ったのに、まさか金型をやることになろうとは・・・」と笑う。
しかし、「複雑そうに見える金型も、モノづくりを突き詰めていくとひとつひとつの物事は非常にシンプルな形になります。日本の美の世界と通じるものがあるのです。」と語るときの顔は、だれよりも熱い想いを持っている“棟梁”だった。

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