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2008年8月27日

英国 レトロスクリーン・バイロロジー社※1と共同検証
プラズマクラスターイオン※2の高濃度化により 浮遊する『H5N1型トリインフルエンザウイルス』を99.9%分解・除去

シャープは、ウイルス学の世界的権威であるロンドン大学ジョン・オックスフォード教授(Prof. John S. Oxford)が設立したレトロスクリーン・バイロロジー社と共同で、容積1m3のボックス内において約5万個/cm3の高濃度プラズマクラスターイオンが、浮遊するH5N1型トリインフルエンザウイルスを10分で99.9%分解・除去することを実証しました。すでに2005年に当社と同社は、約7千個/cm3のプラズマクラスターイオンが同ウイルスを10分で99%分解・除去することを確認しています。今回、さらに高い濃度のプラズマクラスターイオンを用いることにより、細胞への感染を一層高い確率で抑制できることを実証しました。

プラズマクラスターイオンはプラスイオン(H(H2O)n)とマイナスイオン(O2(H2O)m)を同時に空中へ放出し、浮遊する細菌/カビ/ウイルス/アレルゲンなどの表面で瞬間的にプラスとマイナスが結合して酸化力の非常に高いOHラジカルとなり、化学反応により細菌などの表面のタンパク質を分解してその働きを抑制する画期的な空気浄化技術です。今回、高濃度にするほどH5N1型に対する分解・除去効果が高まることが証明されたことを契機に当社は高濃度プラズマクラスターイオン発生デバイスの研究開発を進めてまいります。なお、今回の実証内容については、9月10日に英国で開催される「トリインフルエンザ国際会議」においてレトロスクリーン・バイロロジー社と共同で発表いたします。

当社はアカデミックマーケティング※3の考えに基づき、この8年間世界の学術研究機関と連携して、この技術が空気中に浮遊するMRSA※4など27種類の有害微生物の分解・除去効果があることを実証してきました。このうち、浮遊ウイルスに関しては、H1N1型ヒトインフルエンザ/コロナ/ポリオ/コクサッキーに対するプラズマクラスターイオンの分解・除去効果を確認済みです。また、2005年には「プラズマクラスターイオンが感染のトリガーとなるウイルス表面のスパイク状タンパク質を破壊するメカニズム」も学術機関※5と共同で解明しました。さらに、高濃度プラズマクラスターイオンの安全性も確認しております※6

当社は今後発生が懸念される新型ウイルスへの不安低減に向け、プラズマクラスターイオン技術の進化と実証を重ねることにより、社会への貢献に向けた取り組みを進めてまいります。

ジョン・オックスフォード教授(Prof. John S. Oxford)のコメント

私は1989年にレトロスクリーン・バイロロジー社を創設し、これまでウイルス/薬品/ワクチン/医療用高性能マスクの研究開発・実証を進めてきました。現在、H5N1型トリインフルエンザの変異によるヒトからヒトへの大流行(パンデミック)が懸念されています。個人で行える対策としては、高性能マスクの着用がありますが、プラズマクラスターイオンはこれと並び、パンデミック対策に貢献できる技術として期待しています。

  • ※1 OECD(国際経済協力開発機構)における優良試験所規範であるGLP適合機関。GLPは、3年毎に確認更新が必要で試験施設毎に運営管理、試験設備、試験計画、内部監査体制、信頼性保証体制、試験結果などをチェックし試験成績の信頼性を確保している。
  • ※2 プラズマクラスター、プラズマクラスターイオンおよびPlasmaclusterはシャープ株式会社の商標です。
  • ※3 技術の効能について、先端の学術研究機関と共同で科学的データを検証し、それをもとに商品化を進めるマーケティング手法。
  • ※4 メチシリン耐性黄色ブドウ球菌。病院などで体力の低下した人に感染し、抗生物質が効きにくいことが問題となっている。
  • ※5 (独)アーヘン応用科学大学アートマン教授と共同研究(2005年)
  • ※6 (株)三菱化学安全科学研究所にて試験(吸入毒性試験、眼および皮膚刺激性・腐食性試験)

浮遊「H5N1型トリインフルエンザウイルス」への効果実証方法

容積1m3のボックス内にプラズマクラスターイオン発生デバイスを設置。イオンを発生させ(濃度約5万個/cm3)、H5N1型トリインフルエンザウイルスをボックス内に噴霧しました。噴霧終了5分後および噴霧終了10分後、それぞれボックス内の浮遊ウイルスを回収し、その感染力(感染力価※7)をウイルス研究分野で一般的に用いられているTCID50法※8で調べました。その結果、ウイルスの感染力価は初期ウイルス投入濃度に対して10分後には99.9%減少しました。

浮遊「H5N1型トリインフルエンザウイルス」への効果実証方法
  • ※7 感染力価:ウイルスの細胞への感染能力を表す値。
  • ※8 TCID50法:段階的に希釈したウイルス液を細胞へ接種し感染力を調べる方法。

細胞を用いたウイルスの感染実験

容積1m3のボックス内にプラズマクラスターイオン発生デバイスを設置。イオンを発生させ(濃度約5万個/cm3)、H5N1型トリインフルエンザウイルスをボックス内に噴霧しました。そして噴霧終了10分後に吸引回収したボックス内のウイルスを細胞に接種し3日間の細胞の変化を調べました。 その結果、プラズマクラスターイオンを作用させていないウイルスを接種した細胞は、接種3日後で縮小変形し破壊されているのに対し、プラズマクラスターイオンを作用させたウイルスを接種した細胞では、縮小が見られず正常な形状です。 このことから、プラズマクラスターイオンがウイルスの細胞感染力を抑制することを確認しました。

細胞を用いたウイルスの感染実験 細胞を用いたウイルスの感染実験
  • ※9 MDCK細胞:実験用に用いられる動物の細胞の一種。

酸化力の比較

プラズマクラスターイオンは、プラスとマイナスのイオンが浮遊ウイルスに付着して化学反応し、酸化力の一番強いOH(水酸基)ラジカル(標準酸化電位2.81V)を生成して、浮遊ウイルスの感染力を抑制します。

酸化力の比較

H5N1型トリインフルエンザについて(出典:首相官邸のホームページより)

トリインフルエンザは、トリからトリに感染する感染症であるが、生きたトリとの濃密な接触などによりヒトに感染することもあり、また、ウイルスが変異しヒトからヒトに強い感染力を有する新型インフルエンザウイルスとなる可能性もある。

アカデミックマーケティングによるプラズマクラスターイオン効能実験の一覧

対象有害物質 種類 実証機関 時 期
細菌 セラチア菌 米 国 ハーバード大学公衆衛生大学院 
メルビン・ファースト名誉教授
2007年 3月
大腸菌 (財) 石川県予防医学協会 2000年 9月
大腸菌、白色ブドウ 
球菌、カンジダ菌
中 国 上海市予防医学研究院 2001年10月
バチルス菌 (財) 北里環境科学センター 2002年 9月
CT&T(ドイツ アーヘン応用科学大学 アートマン教授) 2004年11月
MRSA 
(メチシリン耐性 
黄色ブドウ球菌)
(財) 北里環境科学センター 2002年 9月
(社) 北里研究所 北里研究所メディカルセンター病院 2004年 2月
シュードモナス、 
エンテロコッカス、 
スタフィロコッカス
ドイツ リューベック医科大学 2002年 2月
エンテロコッカス、 
スタフィロコッカス、 
サルキナ、 
マイクロコッカス
CT&T(ドイツ アーヘン応用科学大学 アートマン教授) 2004年11月
アレルゲン ダニ、花粉 広島大学大学院 先端物質科学研究科 2003年 9月
浮遊アレルゲン カナダ喘息協会 2004年 4月
真菌 クラドスポリウム (財) 石川県予防医学協会 2000年 9月
ドイツ リューベック医科大学(増殖抑制効果) 2002年 2月
CT&T(ドイツ アーヘン応用科学大学 アートマン教授) 2004年11月
ペニシリアム、 
アスペルギルス
ドイツ リューベック医科大学(増殖抑制効果) 2002年 2月
アスペルギルス、 
ペニシリアム(2種)、 
スタキボトリス、 
アルテルナリア、 
ムーコル
CT&T(ドイツ アーヘン応用科学大学 アートマン教授) 2004年11月
ウイルス H1N1型ヒト 
インフルエンザウイルス
(財) 北里環境科学センター 2002年 9月
韓 国 ソウル大学 2003年 9月
中 国 上海市予防医学研究院 2003年12月
(社) 北里研究所 北里研究所メディカルセンター病院 2004年 2月
H5N1型トリ 
インフルエンザウイルス
英 国 レトロスクリーン・バイロロジー社 2005年 5月
コクサッキーウイルス (財) 北里環境科学センター 2002年 9月
ポリオウイルス (財) 北里環境科学センター 2002年 9月
コロナウイルス (社) 北里研究所 北里研究所メディカルセンター病院 2004年 7月

※上記の対象物に対して、イオン濃度3千個/cm3以上を照射して浮遊物抑制効果を実証した。

ジョン・オックスフォード教授(Prof. John S. Oxford)のプロフィール

ジョン・オックスフォード教授
  • 英国 ロンドン大学 クイーン・メアリー校 医学・歯学部
    細胞分子科学インスティテュート ウイルス学教授
  • レトロスクリーン・バイロロジー社 創立者、代表

[専門]
ウイルス学

[著書]
  • 科学論文: 約250件執筆
  • テキスト: ウイルス学に関する3冊のテキストを執筆
    1. Influenza, the Viruses and the Disease (インフルエンザ、ウイルスと病気)
    2. Human Virology, a Text for Students of Medicine, Dentistry and Microbiology
      (人ウイルス学、医学、歯学および微生物学 学生のための教科書)
    3. Conquest of Viral Diseases (ウイルスによる病気の克服)

[その他]
ウイルス学に関する数多くの国際学会・会議で議長を務める。

ロンドン大学の紹介

1836年創立の英国国立大学で、総学生数11万5千人、19のカレッジより成り、世界有数の規模を持つ。
ロンドン大学を構成するクイーン・メアリー校は、学生数約8,800人で、英国最古の医学学校であるLondon Hospital Medical College(1785年創立)とSt. Bartholomew's Hospital Medical College (1843年創立)の2校を吸収合併して創設され、医学・歯学部の他、生物、化学、物理、電子工学、コンピュータ、法学、文学、政治学など幅広い分野で教育を行っている。
また、ノーベル賞受賞者を7名輩出している。

レトロスクリーン・バイロロジー社の紹介

ジョン・オックスフォード教授により1989年創設。ウイルス、薬品、ワクチン関連の研究・試験機関として設立され、本分野における先端機関として知られる。化学物質の安全性試験の実施において、高い信頼性を維持するための国際的な管理基準であるGLP(Good Laboratory Practice)や、品質マネジメントシステム基準であるISO9001の認可を取得している。

レトロスクリーン・バイロロジー社

ジョン・オックスフォード教授開設Webサイトの紹介

トリインフルエンザウイルス感染リスク低減に向け、新たなアプローチ方法による研究開発を目的とした「A new approach to fighting H5N1(トリインフルエンザウイルスへの新たなアプローチ)」サイトを開設する。また、そのサイト内でオックスフォード教授が実施したプラズマクラスターイオンに関する実験や評価内容を紹介している。

プラズマクラスター技術の概要

プラズマクラスター技術の概要

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