播種(はしゅ)※17日後のイネの様子 左:送風のみ、右:プラズマクラスターイオンあり
シャープは、当社のプラズマクラスター技術について、国立大学法人静岡大学※2農学部 一家崇志 准教授および山下寛人 助教との共同研究により、植物の生育を促進するメカニズムを検証した結果、プラズマクラスター技術が植物の初期生育※3促進に寄与していることを初めて確認しました。
当社は、プラズマクラスター技術が植物の生育にも有益となる可能性に着目し、検証を進めた結果、2016年にプラズマクラスター技術がレタスの生育を促進することを実証※4しました。
今回の実証では、その効果の背景となる、プラズマクラスターイオンが寄与する植物の生育促進メカニズムを確認するため、全遺伝情報が判明しているイネを用いた研究を実施しました。その結果、播種直後からプラズマクラスターイオンを直接照射した場合は、初期生育における芽が送風のみの場合と比較して最大約4倍※5に長くなっており、さらにその生育促進メカニズムとして、エネルギー生成を指示する働き(遺伝子発現)が最大約3倍※6に増えていることを確認しました。以上のことから、プラズマクラスターイオンを照射することで、植物の初期生育を促進できることが示唆されました。
プラズマクラスター技術は、自然界に存在するものと同じ正イオンと負イオンを利用した空気浄化技術で、当社はこれまで20年以上にわたり国内外の第三者試験機関において多くのテーマで試験を実施し、高い安全性およびさまざまな効果を確認してまいりました。
今回の成果は、近年、持続可能な食料生産性の向上が世界的な課題となる中で、プラズマクラスター技術がその解決に向けた新たな一助となる可能性を示すものです。当社は引き続き植物への効果やそのメカニズムについて検証を進め、効果の信頼性を向上させるとともに、プラズマクラスター技術の新たな分野への応用の可能性や、新たな有効性について追究してまいります。
図1.試験装置内部を上から見たイメージ
図2.発芽した種子の様子(播種後1日)
図3.栽培したイネの様子(播種後7日)
図4.初期生育における芽の長さ(n=20)
図5.プラズマクラスターイオン照射1時間後の各遺伝子の発現量
(送風のみを1としたときの相対値、n=3)
送風のみと比較して、プラズマクラスターイオンありの条件に以下の点を確認した。
① 初期生育において芽の成長が早くなること(図4)
② 初期生育においてエネルギー生成を指示する働き(遺伝子発現)が増加すること(図5)
以上の結果より、プラズマクラスター技術が植物の初期生育を促進することが示唆された。
対象 | 実証機関 |
---|---|
植物の生育促進メカニズム | 静岡大学 農学部 |
ヒトの作業能力向上 効果メカニズム |
九州産業大学 人間科学部 スポーツ健康科学科 |
ウイルス・カビ・細菌の 作用抑制効果メカニズム |
ドイツ アーヘン応用科学大学 アートマン教授 |
アレルゲンの作用抑制 効果メカニズム |
広島大学大学院 先端物質科学研究科 |
肌保湿(水分子コートの 形成)効果メカニズム |
東北大学 電気通信研究所 |
臨床試験による効果実証 | 芝浦工業大学 システム理工学部 機械制御システム学科 |
九州産業大学 人間科学部 スポーツ健康科学科 | |
鹿屋体育大学 スポーツ・人文応用社会科学系 | |
(株)リトルソフトウェア | |
(株)電通サイエンスジャム | |
東京大学大学院 医学系研究科 / (公財)パブリックヘルスリサーチセンター | |
中央大学理工学部 / 東京大学 医学部附属病院 臨床研究支援センター | |
ジョージア 国立結核病院 | |
(公財)動物臨床医学研究所 | |
(株)総合医科学研究所 | |
東京工科大学 応用生物学部 | |
HARG治療センター / (株)ナショナルトラスト | |
植物 | 静岡大学 農学部 |
アレルゲン | 広島大学大学院 先端物質科学研究科 |
大阪市立大学大学院 医学研究科 分子病態学教室 | |
安全性 | (株)LSIメディエンス |
細胞への影響評価 | コロンビア大学 医学部 |
ニオイ・ペット臭 | (一財)ボーケン品質評価機構 |
(公財)動物臨床医学研究所 | |
美肌 | 東京工科大学 応用生物学部 |
美髪 | (株)サティス製薬 |
(有)シー・ティー・シージャパン | |
有害化学物質 | (株)住化分析センター |
インド インド工科大学 デリー校 | |
カビ | (一財)石川県予防医学協会 |
ドイツ リューベック大学 | |
ドイツ アーヘン応用科学大学 アートマン教授 | |
(一財)日本食品分析センター | |
(株)食環境衛生研究所 | |
中国 上海市予防医学研究院 | |
(株)ビオスタ | |
千葉大学 真菌医学研究センター | |
細菌 | (一財)石川県予防医学協会 |
中国 上海市予防医学研究院 | |
(財)北里環境科学センター | |
(学)北里研究所 北里大学メディカルセンター | |
米国 ハーバード大学公衆衛生大学院 名誉教授メルビン・ファースト博士 | |
(公財)動物臨床医学研究所 | |
ドイツ リューベック大学 | |
ドイツ アーヘン応用科学大学 アートマン教授 | |
(一財)日本食品分析センター | |
(株)食環境衛生研究所 | |
タイ 胸部疾病研究所 | |
(株)ビオスタ | |
ウイルス | (財)北里環境科学センター |
韓国 ソウル大学 | |
中国 上海市予防医学研究院 | |
(学)北里研究所 北里大学メディカルセンター | |
イギリス レトロスクリーン・バイロロジー社 | |
(株)食環境衛生研究所 | |
インドネシア インドネシア大学 | |
ベトナム ベトナム国家大学ハノイ校工科大学 | |
ベトナム ホーチミン市パスツール研究所 | |
長崎大学感染症共同研究拠点・熱帯医学研究所 | |
島根大学 医学部 微生物学講座 | |
コロンビア大学 医学部 |
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<一家 崇志(いっか たかし)准教授(静岡大学農学部)のコメント>
イネを用いた生育評価および遺伝子解析の実施により、プラズマクラスターイオンの照射が初期生育を促進しているというメカニズムの一端が分かりました。このことは、今後のさまざまな作物に対する研究に応用できます。たとえば、発芽から育苗までの期間にプラズマクラスターイオンを用いることで、栽培期間を短縮し生産コストを下げるなど、実際の作物栽培にも応用展開できる非常に有益な結果です。また、植物工場においては、日本国内ではレタスなどの葉物が主流ですが、国際的にはイネなどの穀物への適用も進み始めており、非常に意義のある研究成果だと考えられます。今後、実用化に向けてこの研究をさらに発展させ、社会課題の解決に実際に貢献されることを期待しています。